思い出の写真
幼い頃から写真を撮るのが好きで、親のカメラであれこれ撮っていました。
20代になってすぐの初めての一人旅の際には、ポラロイドカメラを持っていき、色々な場所の景色を撮ったものです。
そのポラロイドカメラは、今は亡き父からもらったとてもごついものでしたが、私はとても気に入っていました。なので、出かける際には必ず持ち歩いていました。
そのカメラにまつわる出来事で一番思い出深いのは、壇ノ浦で出会ったふたりの男の子たちのことです。
小学校高学年くらいだったでしょうか。私が海を撮影していると、「何を撮ってるの?」と聞かれました。海を撮っているのだと答えると、私の持っているカメラに興味を示したようでした。「撮ってみる?」と尋ねると、ふたりとも大きく頷きました。
撮り方を教えてから、交代交代に撮らせました。それぞれに撮ったものを手渡すと、そのじわじわと出てくる様子に「うおー!」「すげー!」と歓喜の声をあげていました。
「それ、あげるよ」と言うと、「ホント?!やったー!」とふたりともとても喜んでいました。最後にひとりずつ写したものをあげると、また大喜び。「私も記念撮影させてもらってもいい?」と言うと、ふたりとも嬉しそうにポーズを取ってくれました。
「すぐに帰って自慢しようぜ」「いいね!」などと話していたふたりは、私に「お姉さん、ありがとう!」と言って、そこから弾むようにして帰っていきました。
その時の写真は今も大事にとってあります。
その子たちも、多分もう30代でしょう。
写真はもう捨てられちゃっているでしょうが、あの屈託のない笑顔のままに元気に幸せに過ごしているといいなと、心からそう思うのです。